仲の良い同級生は、僕が大学に残って研究者になると思っていたそうです。父親も祖父も研究者でしたし、私自身研究も好きで、いつも何か新鮮な発見を探して、出会えるのが良いですね。
しかし、まずは歯科医師として臨床の現場にとことん浸かってみようと考え、池袋にある歯科診療室でキャリアをスタートしました。週5日勤務で、2年間ほど自分なりに頑張ってみました。当時の院長先生は大学での実習の担当教官でしたので、色々と教えていただきましたが、きっちり恩返しが出来たかどうかは分かりません。むしろ心残りが今でもあります。
その後、江戸川区平井と品川港南口にある2つの歯科医院にて掛け持ち勤務をしていました。まだ若かったということもあり、限界を見てみたいという思いもあり(笑)8時〜21時まで週7日、祝日も休まず2年間仕事だけの日々を送りました。
働き始めの2〜3週間は疲れるのですが、そこを乗り切ると自分では全く疲れを感じなくなったことを覚えています。尚且つ素晴らしく勘がさえ、よどみ無く自然と体が動いていたことを覚えています。ただ友人達には会うたびに『顔色悪くない!?大丈夫?』と心配されていましたが (笑)
その後同級生のお父さんのクリニックで働いたり、同級生の診療所で働いたりと色々経験させてもらう中、雇われ院長の話をいただき、流山市運河で2年間ほど分院長の職に就きました。
その頃になると、歯科医師としての生活にも慣れ、患者さんと触れ合う喜びを感じられるようになりました。そこでは素敵な患者さん達との出会いに癒され、活力をいただきました。素敵なデザインをする女性との出会い、今でも大変お世話になっています(ありがとうございます!)。生活保護を受けていらっしゃったのに、毎回お菓子を買ってきていただいたお爺さん。俺の体で試して良いよと言われて、行ったことが無いが必要なオペを、行ったりさせていただきました。美味しい空揚げを揚げてきて、時々食べさせていただいてお婆さんなど色々な出会いがありました。
2つ理由が有ります。一つは開業場所を探してる時に、最初に紹介された場所が市ヶ谷でした。父親に言われた『仕事を選ぶようでは決してプロとは言えない、仕事は断るな!』という言葉と、『何時いかなる場所でも仕事をこなすのがプロ』と言う自分の仕事観で決めました。
もう一つは、自分の出身大学である日本歯科大学をはじめとした、様々な医療系大学が近いため、研究や調べ物をしやすい環境と思い、この地に決めました。
歯科業界では都心部での開業はリスクが高いと言われていますのが、実際、最初は本当に大変でした(笑)。しかしながら仕事をするのに市ヶ谷は、大変刺激的で面白い場所ですね。
プロとハイアマチュアの違いではないでしょうか。 それは、プロとしての意識とレベルを求められるという事ではないでしょうか。では、プロとは何なのでしょうか。上手ならばプロなのでしょうか。多分違うと思います。上手いだけでは単にハイアマチュアであり、上手く出来たら上手くできたねと言われる世界ですが、プロは出来て当たり前です、むしろどんな環境でもどんな状況でも常に、上手くできなくてはいけません。尚且つ上手くできるだけでなく、高い倫理観と周りへの貢献も求められる、それが多分プロなのだと思います。どんな環境でもどんな状況でも結果を出さなければならない、それは難しいことですが多分求められていることなのでしょう。
私も若いと言われる年齢から、中年になってきましたから、少しは笑いのある空気感が必要だと感じています。歯科の難しい話やテクニックも重要ですが、何でも笑いながら大変なことを大変じゃないように“錯覚”させるような仕事がしたいですね。 記憶の中に中学の時に住んでいた浦和の耳鼻科の先生がいます。その先生は、いつも冗談を独り言のように言って笑いを取りながら、締める“一瞬”だけは締めるような診療をしていました。突き詰めると“一瞬”に凝縮されている、そこまで来ると診療も芸術ですね。真剣で間合いを詰める瞬間も、アイデアが浮かぶ瞬間も“一瞬”です。そしてその集合体が、良い診療や芸術の結果になる気がします。そんな診療が良いですね。 もしこれからの人たちに歯科医師の仕事の良さを伝えるならば、自分の仕事の結果にいくらでも「感謝される」を、自分の“努力”で直接的に付け加えていけることでしょうかね。少々私は最近、年取って疲れてきてますけど(笑)